Considerazione sulla Carbonara
「"カルボナーラ"という超マジョリティと、
"正統なカルボナーラ"という超マイノリティ。」
イタリアのパスタ料理において、
世界的に見ても日本国内においても
カルボナーラほど知名度があって市民権を得ているパスタはないのではないでしょうか。
しかしながら、
同時にカルボナーラほど正統な形が誤解されているパスタもない、と言えると思います。
実際に我々イタリア料理を作ることを生業する人間たちでさえ、
ローマの正統なカルボナーラを説明できる人間ばかりではありません。
、、、と、
そんなエラそうな事を言っている僕でも
ローマの正統なカルボナーラの定義というものを今まで自信を持って答えることは出来ませんでした。
昨日、イタリアの料理研究家であるマリーナのセミナーに参加する幸運により
そこのところが初めてはっきりと分かりました。
日本において、
カルボナーラというパスタのイメージと位置付けは
「卵とベーコンを使った濃厚クリームソース、
ちびっ子から大人までみんな大好き❤」
というイメージで、
子どもと外食する時の安全牌の1つと認識されているような印象を受けます。
僕の経営するシチリア料理専門店では、
当然ながらメニューにはないのですが、
普段「カルボナーラを作ってください」とリクエストを受けることもほとんどありません。
でも稀にお子様用に「カルボナーラみたいなクリームソース」
というリクエストを受けることもあり、
非常に困る時があります。
なぜならローマ料理としてのカルボナーラはそもそもクリームソースではないからです。
そこで、
イタリアのカルボナーラですか??
ファミレスで食べる感じのカルボナーラですか⁇
黒胡椒は使用してもいいですか⁇
なんやかんや、、。
と、なります。
ではまず、
ローマの正統なカルボナーラとはどんななん?
というところですが、
①豚の頬肉の塩漬けであるグアンチャーレを使用する
②卵は全卵ではなく卵黄だけを使用する
③生クリームや牛乳などは絶対に加えない
④チーズはペコリーノロマーノを100%使用する
⑤卵は加熱しない
と、このような条件になります。
この時点で日本人の99%はローマの正統なカルボナーラを食べたことがない、
ということになると思います。
この定義には必ず反論もあると思います。
「イタリアで食べたカルボナーラはパンチェッタだった」
「イタリア人に教えてもらったレシピはパルミジャーノだった」
「イタリア帰りの日本人シェフも生クリームを使っていた」
などなど、数えたらキリが無さそうです。
大前提として
なぜ、こんなにも形を変えたカルボナーラが浸透しているのか、
これはまずイタリア国内でもカルボナーラのカタチが多様であるのが原因の1つであると、僕は思います。
イタリア国内にも生クリームや牛乳を使ったり、パルミジャーノを使ったり、加熱したりしたカルボナーラが存在します。
それはレストランのシェフや家庭のマンマがアレンジをしていくからだと思われます。
僕自身、イタリアのレストランで働いていたころ、
皿洗いのシニョーラが賄いで作ったカルボナーラはオリーブオイルで卵をポロポロに炒めてそれをパスタに和えた"卵ポロポロナーラ"でした。
当時の僕は「これはカルボナーラじゃない!」とも思わずに「イタリアではこれもカルボナーラと認識されているんだ!!新発見!!」と、新鮮な気持ちでした。
ローマで食べ歩きした時には
パルミジャーノを使っていたり、
グアンチャーレではなくパンチェッタであることもありますが、
人々を取り巻く環境や嗜好の変化で
料理自体が時代の流れと共に変化したり、無くなっていくのだと思います。
北イタリアで修行を積んだコックが生クリームを入れたカルボナーラを学んで日本に帰ってきたらそれを日本で再現するでしょうし、
卵ポロポロナーラをイタリアのマンマから教わったコックは日本に帰ってから、あれがイタリアの家庭のリアルなカルボナーラだ、と伝えると思います。
イタリアにおけるパスタ王、パスタ法典のヴィンチェンツォ・ブォナッシージの本のリチェッタですら生クリームの記載がありました。
つまり、
生クリームや牛乳が入ったものや、
加熱したり、パルミジャーナを使ったものも
「ローマの正統なカルボナーラ」ではなくとも、
「イタリアのカルボナーラ」と言って良いのではないでしょうか???
"イタリアのカルボナーラにも色んなヴァリエーションがあるよ。
でもローマの伝統的な正統派はこのスタイルだよ"
と。
ですから、
外国人である我々日本人コックは
イタリアローマの正統派を理解した上で、
そしてイタリア料理へのリスペクトを持った上で、
自分のカルボナーラはこのスタイル!
とするのが大事なのかなぁと思います。
そんなこんなで、
今日は賄いでカルボナーラを作りました。
昨日教わったように
なるべく忠実に作る気満々でしたが、
グアンチャーレの代用で生ハムの脂身の多い部分をいきなり使いました、、、あべし。
最後に、
セミナーを企画してくださった長本先生、
今回のセミナーの講師マリーナに感謝の意を申し上げます!!
ありがとうございました😊